熊本県には「くまこう」と呼べる高校が3校あります。
熊本工業高校、熊本高校、球磨工業高校の3校で、一般的に「くまこう」と呼ばれているのは熊本工業高校です。
毎年、東大をはじめ有名大学に進学している熊本高校が熊本を代表して「くまこう」と呼ばれても不思議ではありませんが、熊本高校は「くまたか」です。
球磨工業高校は、球磨人吉地区では「くまこう」と呼ぶこともありますが、一般的には略すことはないようです。
そんな熊本県の人気校「くまこう」熊本工業高校の入試実態について経験をもとにお伝えしたいと思います。
熊本工業高校はどんな高校?
熊本工業高校は1898年創立で2023年の今年、創立125周年を迎えた熊本県の名門工業高校です。
野球の神様川上哲治の出身校として、野球部は名門でもあり、全国的には1996年夏の甲子園、松山商業高校との決勝の奇跡のバックホームが有名です。
1996決勝 松山商業×熊本工業
夏の県勢初優勝を狙う熊本工は1点を追う9回2死から1年生・澤村が起死回生の同点本塁打。10回も1死満塁とサヨナラのチャンスをつくったが、右翼への飛球を松山商・矢野に本塁にダイレクトで返球されて三塁走者・星子は本塁憤死。11回に先頭・矢野の二塁打を足掛かりに3点を奪った松山商が、春夏合わせて7度目の優勝を果たした。
Sports Graphic Number Moreより引用 https://number.bunshun.jp/articles/-/838081
ほかにも全国大会出場の部活が多くあり、熊本では熊工といえば部活動のイメージが強い高校でもあります。
そんな熊本工業高校ですが、合格するための入試のレベルはどれくらいのものでしょうか?
設置学科
熊本工業高校の設置学科と入試倍率は次の通りです。(令和3年度データ/前期+後期入試分)
学科 | 募集人員 | 受験者数 | 倍率 |
機械科 | 40 | 84 | 2.1 |
電気科 | 40 | 54 | 1.35 |
電子科 | 40 | 60 | 1.50 |
工業化学科 | 40 | 47 | 1.18 |
繊維工業科・テキスタイルデザイン科 | 40 | 37 | 0.93 |
土木科 | 40 | 36 | 0.90 |
建築科 | 40 | 112 | 2.80 |
材料技術科 | 40 | 29 | 0.73 |
インテリア科 | 40 | 102 | 2.55 |
情報システム | 40 | 123 | 3.08 |
合計 | 400 | 684 | 1.71 |
上記のように、定員割れしている学科もあるものの、人気の学科はかなり高い倍率になっています。
特徴的な志願方法
高校受験の願書を出す場合、普通は「〇〇高校の〇〇学科」のように行きたい学科を記載するものですが、熊本工業高校の場合、第一志望「〇〇学科」、第二志望「全科」という志願ができます。
例えば、第一志望 情報システム、第二志望 全科、という形です。
これによって情報システムを第一志望で出願しても、材料技術科で合格となることもあります。
一般的な偏差値
熊本工業高校の偏差値は51~57となっています。
みんなの高校情報ホームページより
この51~57という幅は学科ごとの入試倍率によるものですが、名門校だけあってそれなりに高い偏差値になっています。
熊本工業高校の入試の特徴
前期入試で半分の合格者が決まる熊本工業高校
熊本県の高校入試は「前期特色入試」と「後期一般入試」の2種類あって、普通科以外の学科がある高校は定員の50%を上限に「前期特色入試」を利用することができます。
熊本工業高校の場合、普通科はありませんので、全科定員の半分は「前期特色入試」で決まります。
この「前期特色入試」ですが、別名「部活枠」と言われているところもあって、熊本工業高校はこの「部活枠」の色合いがかなり濃いと思われます。
これは前期入試の配点をみるとその傾向がよくわかります。
高校 | 学科 | 募集定員に占める割合 | 検査内容 | 配点割合 |
---|---|---|---|---|
熊本第一高校 | 英語科 | 25% | 〇英作文 〇面接 | ○英作文(5割) ○集団面接(3割) ○調査書(2割) |
熊本第二高校 | 理数科 | 50% | ○独自問題 ※理科に関する思考力を問う問題 ※数学的な思考力を問う問題① ※数学的な思考力を問う問題② | ○独自問題(8割) ○調査書(2割) |
熊本北高校 | 英語科 | 50% | ○作文(英作文) ○個人面接(英語を主とした面接) | ○作文(4割) ○面接(3割) ○調査書(3割) |
熊本工業高校 | 全科 | 50% | ○集団面接 | ○集団面接(3割) ○調査書(7割) |
熊本第二高校や熊本北高校も募集定員割合は50%となっていますが、いずれも学科自体の定員は1/10程度です。
それに比べると、熊本工業高校は全科定員400名の半分の200名がこの前期入試で合格が決まります。
そして、注目すべきが配点の割合、他の高校が調査書2割程度のところ、熊本工業高校の場合7割にも達しています。
受験生は、試験当日に配点3割の面接試験を受けますが、この時点であるていど合否が決まっていることは事実だと思います。
私の塾生にも部活動で注目されるような結果を残した生徒で熊本工業高校を受験した生徒は、一人の例外もなく全員が前期入試で合格していました。
一般入試(後期入試)の難易度はどのくらい
熊本工業高校の募集定員は例年400人ですが、前期試験で半数の200人の合格が出ますので後期試験での募集定員は200名になります。
この200人(実際の合格者は203人)の定員に対する令和5年度における後期試験の受験者は271人、倍率にすると1.3倍となり、倍率だけでいえば済々黌高校の1.3倍と並び、熊本高校の1.5倍に迫るものです。
熊本県教育委員会ホームページ 令和5年度(2023年度)熊本県公立高等学校合格者数及び二次募集実施校 より抜粋 https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/life/166320_386883_misc.pdf
前期試験が部活生で占められていることを考えると、熊本工業高校は難関校の一つかもしれません。
卒業後の進路について
熊本工業高校のホームページによると、令和4年度の国公立大学進学者は8名、高専進学者は3名、私立大学や専門学校などへの進学者の人数は発表されていません。
1学年の定員が400人ですので、ほとんどが就職すると思われますが、同じく令和4年度の就職実績をみると、公務員自衛官が70人のほか、トヨタ自動車などの県外有名企業もあり、就職には強いようです。
まとめ
中学生の公立高校志望者の中でも、熊本工業高校へいきたいという生徒は毎年多くいました。
就職が強いからという理由がほとんどで、選択としては決して間違ってはいないと思います。
近年の人手不足の中、基本を学んだ工業高校生は企業にとっては宝物だと思います。
普通科の高校を出て、何となく大学や専門学校に行き、自分のやりたいことが見えないまま何となく就職するのと比べると、やりたいことを明確にしている人材は企業にとってもありがたいものです。
中学生の時点で将来のビジョンを明確にするのは難しいと思いますが、早く社会に出て稼ぎたいと考えるなら、熊本工業高校は最適の進学先だと思います。
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