中学生が毎日学校に行く。当たり前のように思われるかもしれませんが、学校に行けない中学生は今も昔も確実にいます。
そういう筆者も学校に行くのが嫌で、当時の水銀体温計を細工して熱があるといって学校を休んでいた時期もあり、当時は今のような支援体制があまりなく、嫌なことでも我慢してやっていくのが美徳のような風潮もありました。
ここではこれまで見てきた不登校生の実体験とともに高校合格の対策についてお伝えしたいと思います。
3年間不登校生だった生徒が高校合格した
これはあくまで熊本市の状況ですので、熊本県内地方部や他県については当てはまらないかもしれませんが、公立高校については調査書(内申点)の関係から合格は難しいと思います。
それでは、私立高校はどうなんでしょうか?
私立高校も調査書(内申点)を加味して合格を決定すると募集要項にはありますが、公立高校ほどの割合ではありません。
実際に私の塾に来ていた生徒は、ほぼ3年間不登校状態でしたが、熊本市内の私立高校に合格しました。
本人も必死に勉強していて、保護者もこんなに勉強している姿は初めて見たとおっしゃっていましたが、それでも学力的には小6からせいぜい中1くらい。
では、どうしたかというと、「面接対策」です。
中学3年間不登校で5教科受験は無謀
熊本県の高校入試は公立前期特色や私立専願を除き、公立高校、私立高校ともに入学試験は最近ではほとんどが英数国理社の5教科です。
まずは、中学3年間不登校だった生徒にこの5教科3年分を勉強させるのは正直無謀です。
ましてや、この生徒が入塾してきたのは夏休みも終わった時期で、私立高校の入試まで半年も無い時点から中学校3年間分の学習内容を復習するなんて出来るはずもなく、最初は入塾を断ろうかとも考えましたが、どうしても高校へ行きたい意欲は持っている様子で、何とかならないかと色々考えました。
受験はさておいてまずは基礎中の基礎
実は当時講師をしていた大学生の中に、中学生時代1年ちかく不登校だった講師がいたので、全授業の担当は難しいものの担当講師として塾長共々その生徒を見てもらいました。
その講師は元々成績はよかったものの、その後頑張って勉強に打ち込み、見事、熊本大学工学部に合格した経歴を持っていて、授業中はもちろん、自習に来た時にも色々と相談に乗ってくれて、こういうところは個別指導塾ならではかもしれません。
戦略としては、入試問題の問1を全問正解すること。
数学なら計算問題、国語なら漢字です。
最低でも問1は5回は見直して、そのうえでそれ以外に手を付ける時間があったら、とりあえず空白を無くすために記入するやり方です。
受験校は私立専願で3教科受験
最近では私立高校もほとんどが5教科入試と書きましたが、普通科以外や専願の場合3教科入試の私立高校もいくつかあります。
問1だけとはいえ、5教科やるには基礎学力と期間が短すぎたため、受験校は自ずと決まりましたが、中学校の進路指導ではそこも危ないといわれていました。
それでも、熊本市内の高校に行きたい、必死で頑張るとの話があったので、もしダメだったら2次募集で県外もあり得る状況を了承してもらって取り組みました。
私立高校入試のカギは専願と面接試験
熊本県の私立高校専願入試の場合、ほとんどの学校で面接試験が入っています。
そして、これはある意味抜け穴のようなものです。
熊本県の私立高校は一部の人気校を除いてどこも生徒不足に悩まされていて、奨学入試には多くの受験生がくるものの、全てが公立高校の滑り止め受験なので、実際に入学するのは合格を出した人数の1/3程度、300人の合格を出しても入学するのは100人程度です。
そのため、私立高校としては、合格を出せば入学する専願受験生について合格ラインを低く設定していて、尚且つ面接試験という「明らかな点数が出ない」ものを入試科目に入れて合格を出しやすい環境をつくっています。
私立高校は、高校といえども生徒からの授業料や補助金を得て経営している営利企業の一つです。
生徒募集というのは、一部の人気校はともかく、生徒が入学しない事には経営、すなわち学校自体の存続にかかわることです。
この不登校生徒の場合は、入学した後のことも考えて授業では基礎を徹底して行い、受験対策は、面接対策として毎日のように模擬面接を行いました。
熊本県の私立高校入試についてはこちらの記事もご覧ください
私立高校の面接試験の内容
生徒からの聞き取りにはなりますが、高校入試でそんなに難しい内容を聞かれることはありません。
名前、中学校名、志望動機、くらいでしょうか。
聞かれる内容については、中学校の進路指導で高校別の面接試験内容を聞き取り調査したプリントが配られるので、そんなに心配する必要なありません。
私自身、入学試験面接の経験はありませんが、企業での入社面接試験官の経験はあったので、だいたいのイメージはわかっていますが、1回の面接でその人間の内側まで知ることなどできません。
ただ、しぐさや態度で意欲のあるなしはなんとなくわかりますし、中学生相手なら話していることが本当か嘘かくらいはわかるのかもしれません。
この生徒に限らず、面接がある高校を受験する生徒については全員徹底して模擬面接をおこなってきましたが、緊張して言葉が詰まるなんてどうでもいいので、入学したい、頑張りたいという意欲だけは普段から持つようにして面接で伝え、嘘だけは絶対にわかるのでつかないよう指導してきました。
入試の結果は
入試の結果は見事合格しました。
本人も保護者も大変喜んでいてこちらが恐縮するくらいのお礼の言葉をいただきましたが、結局は本人の頑張りが全てです。
合格した高校を考えると、もしかするとここまでする必要はなかったのかもしれませんが、努力して得た結果と、たまたま得た結果とでは、内容は同じでもその後の考え方や動き方に大きな差が出るはずです。
まとめ
小学校中学校と当たり前に通学して、部活に打ち込み、成績の上下は別にして学校の授業や宿題に向き合う。
こんな生徒ばかりなら、保護者も学校も楽なのかもしれませんが、実際はそうではなく、文部科学省が発表した令和4年度小・中学校における理由別長期欠席者数(不登校等)の調査結果によると
在籍児童生徒数 | 不登校児童生徒数 | 割合 | うち90日以上欠席 |
9,442,083人 | 299,048人 | 3.2% | 165,669人 |
文部科学省 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 より抜粋
不登校の理由や状況は様々でしょうが、一つだけ言えるのは、小学校から中学校は義務教育ですが、中学校から高校については自分自身や保護者の意思が必要になってきます。
私が出会った生徒は、本人の頑張りの結果高校には合格しましたが、その後もしかすると高校で不登校になっているのかもしれません。
しかしながら、この生徒は自分で高校に行きたいという意思確認を明確にした結果、周りが支えるようになり、合格したという事実は自信になっているはずです。
不登校で勉強が追い付いていないので高校受験は無理、なんてことは熊本県に限らずどこの地域でもありません。
心配は不要です。
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